piXlogic社の日本市場戦略−投資モデルと事業開発モデル−
piXlogic社 ディレクター・国際事業開発担当 潮 尚之氏
大企業でソフトウエア開発者として長年勤務していた.米国駐在の際には,ベンチャー企業との連携を推進していたが,その当時注目していたベンチャー企業が,後々軒並み躍進したことから,自身の目利き能力に自信を持つようになった.
その後,個人で欧米ベンチャー企業の日本進出サポート等のコンサル事業を立ち上げたが,仲介者であってビジネスの主役にはなりえないという立場に物足りなさを感じた.
そのような状況の中,注目していたpiXlogic社から,日本市場における事業開発担当者への就任を要請された.2006年11月にはシリコンバレーへ拠点を移し,国際事業開発のディレクターとして活躍している.
piXlogic社は,類似画像検索ソフトウエア技術を強みとしたベンチャー企業である.手書き文字の認識技術に基づいた新しいアプローチは,高度な文字認識を可能にした.簡単に手順を述べると,まず形状に着目し,形状の識別,形状のベクトル化,記述の合成(位置,大きさ,色,相互関係等)という順でデータを重ねていく.
この斬新なアプローチにより,例えば,画像に単語の一部のみがあるような場合でも,元の単語を検索し認識することができる.また,背景と事物を判別し,自動分類を行うことも可能である.さらにこれらの技術は,動画にも対応している.
アプリケーションプログラムにより編集された画像・.映像されたデータは,piXlogic社のサーバ(piXserve)に取り込まれ,画像情報のインデックス化後にメタ・データとして保存される.ここから検索情報にインデックス化される.検索対象画像や文字は,その後検索システムを通してマッチングされる.
本製品は,エンドユーザー向けサーバソフト,B2B,B2Cサービスプロバイダ,OEMユーザ向けに開発を進めている.中心となっているのは,エンドユーザー向けのサーバソフトである.
アプリケーションの用途として,セキュリティ,デジタル・アセット・マネジメント,およびeコマース,mコマースを想定している.其々を具体的に例示すると,セキュリティ用途では,保存・録画済み画像から,監視が必要な場所や人物の情報を予め設定し,検索する場合や,リアルタイムの監視映像から類似画像を検索した防犯が挙げられる.
またデジタル・アセット・マネジメントでは,静止画や動画の編集,製作業務を高度化,効率化する.またコンテンツ収集を高度化,効率化することも可能であり,eコマースやmコマースへ発展する可能性が高いと考えている.
piXlogic社の拠点は,米国・シリコンバレーである.In-Q-Tel社の出資を受け,インテリジェンス,デジタル,イメージングやセキュリティ関連の米国政府機関や民間企業を主要顧客としている.創業7年の現在,代理店経由の米国内ソフトウェエア販売を中心として,売り上げ・利益を確保している.
日本市場進出に際しては,米国と日本との違いに注意している.例えば,顧客に関しては,米国では企業と政府関連機関との直接取引が可能だが,日本では段階を踏んだ手順が必要とされるなど,ビジネス慣習に違いがある.その他の諸々の違いにも配慮しつつ,日本進出の戦略作りを進めているところである.
piXlogic
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最新イメージセンサー技術とバイオアプリケーション
ブレインビジョン(株) 代表取締役社長 市川 通教氏
ブレインビジョン(株)は,1998年に設立された理化学研究所発のベンチャーである.事業内容は,脳・神経科学および心臓基礎医学分野に超高速イメージング装置の開発である.
主要技術は,CMOSセンサー,デジアナ混在電子回路である.2006年3月時点で,従業員は9名,売り上げは1億1千万円である.研究開発には毎年2000万円を投入しており,経常利益は670万円となっている.
主要取引先は,民間,研究用に限定し,軍事用は考えていない.非常に高価なシステムであるが,コンスタントに受注があり,潜在的ニーズを反映していると考えている.
自社内では,研究・開発・ソフト作成および技術サポートが中心業務となっている.研究では,理化学研究所との協力関係を維持しており,他大学,企業,法人等とも技術・資金などの支援・提携関係を築いている.
製造部門は自社内に有しておらず,他企業と協力関係を築いている.そのうちの一社とは,2002年より共同開発を続けている.販売に関しても,他社との提携により進めている.
脳活動は,電気活動であるが,計測には様々なアプローチがある.計測の対象は活動電位(インパルス)で,だいたい1msec,50mVのインパルスを計測する.通常は細胞内に電極をさすことにより計測するが,その場所を明確かつ性格に特定することは技術的に難しいこと,僅かな変位で抜けてしまうなどの問題点がある.そこで,電位を感知する色素(膜電圧感受性色素)が開発された.
当社の製品は,この膜電圧感受性色素をケミカルプローブとして用い,染色した脳や心臓組織の膜電位の光量変化を高速撮影素子で捉えることにより,リアルタイムでのイメージングを可能にしたものである.
これは,染色した神経や心臓細胞の膜電圧が,その活動に応じて変化する際,吸光度や蛍光強度も比例的に変化するという特徴を応用したものである.この方法では,光学システムの倍率を変更するだけで,計測ポイント数を減少させることなく空間情報を得られるというメリットもある.
具体例として,例えば心室細動のイメージングは,手術の際の画像診断に有用であると考えられる.また,海馬-大脳皮質のイメージングは,海馬の刺激を大脳皮質に伝える様子の観察により,新領域研究を発展させる礎となろう.将来的には,電気刺激下での細胞培養を利用した再生医療などが応用分野として挙げられる.
このイメージング技術だが,高いS/N比と数ミリ秒のサンプリング速度の両方が必要とされる.これまでは空間解像度と時間解像度のバランスが不十分であったが,当社の開発した最新の画像診断機は,100×100画素,差速10KHzでの計測を可能とした.これは,当該分野の最高性能機となっており,世界シェアNo.1の実績をもつ(100台,2005年度).
当社ではイメージングデバイスとして,サブマイクロ〜ナノ秒分の分解能をもつイメージセンサーを開発してきた.この技術によって,単純な平面画像(光点の集まり)ではない物理量の検出も可能になる.
例えば,距離計測,蛍光寿命や通信機能(超高速画像取得)などが考えられる.換言すれば,単なる画像ではなく,何らかの物理量を付加した画像を捉えることである.現在目標としているのは,距離・通信・画像の同時取得である.
株式会社ブレインビジョン
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