「大田区ベンチャー動向」
ものづくりNPO 外村氏
産学連携におけるNPOの役割
大企業は、大学と包括提携などをして大学の技術を移転しやすくしている。
しかし、中小企業は、未だに産学連携とはなんぞやという世界である。大企業と中小企業では、産学連携に関する意識差が拡大している。大田区の中小は、下請け、またその下請けという形態があり、世の中がどこに進んでいるのかよく分からない。これはまるで、ストローから天井を見ているのと同じである。ものづくりNPOは、それらの中小企業に対して産学連携の支援を提供する。
なぜNPOなのか
行政セクターでは、スモールガバメント化が進んでおり、地方自治体では産学連携に対するきめ細かい支援活動は期待できない。また、営利目的の産業セクターは、あまり儲からない領域には手を出したがらない。しかし中小企業に産学連携を浸透させることは、産業再生に不可欠であり、営利目的ではないNPOが一番ふさわしいのである。
活動状況
平成15年11月から12月にかけて、「大田工業集積地の企業ニーズ調査から見た現状」と題してアンケートをした。その中で産学連携に対して、ポジティブな回答を得た500社をメンバー14人ですべて訪問した。そのなかから、具体的に進んでいるプロジェクトが幾つか生まれている。例えば、筑波大学と大田区の企業間で、セキュリティーの高いオペレーションシステムのプロジェクトやめっきに関する共同研究も始まっている。また、早稲田大学との間では、食品の保管技術をベースとしたプロジェクトも始まっている。全体的には、500社から300件のニーズ情報がもたらされ、そのうちの30件くらいについてはなんらかの具体的な行動に出ている。
ニーズ思考でのマッチングが必要
ニーズを出発点にして、シーズに向かってゆくことが重要である。
まず企業から、ニーズを聞き出す。それから、ネットワークをつかって、全国の研究室の教授からシーズに関する情報を得る。その後、NPOをコーディネーターとして企業と研究室のプロジェクトチームを形成する。NPOは、企業と契約を結び、双方の事務処理などはすべてNPOが行う。また、トラブルがあれば、すべてNPOが解決し、教授陣に迷惑がかからないように心がけている。(ページトップへ戻る)
「大田区ベンチャー動向」 ものづくりNPO 金森氏
2次下請け企業は優秀である
大田区の中小企業は、どちらかというと一次下請けよりも二次下請けがメインである。二次下請けは、優秀であると感じている。なぜならば一次下請けは、二次下請けに発注する際、10%から20%くらいマージンを取っている。それにもかかわらず、2次下請けは存続する仕組みを作っているからである。それは、日ごろより知恵を絞り、いかにコストを安くて済ませる方法をあみ出した結果である。NPOとしてもこういう下請企業を手助けたいと思っている。
スピードが大事
二次下請け企業に大学発の技術を扱わせれば、スピード対応が可能となる。なぜならば、二次下請けは日々一次下請けからの短納期依頼に対応しているからである。大切なのは、ニーズ思考で考えることである。シーズ思考だとどうしても完璧なものを作ろうとしてしまう。その結果、無駄な時間を費やす傾向があり、気が付いたら他社に追い抜かれていることもある。特に大田区のように、スピードが問われているところでは、完璧なものより、とにかくニーズを満たす製品を世に送り出すことを中心に考えたほうがよいと感じている。
これからのNPOの役割
異業種交流会はうまくいかないことが多くある。それは、トップの我が強すぎるからである。その間を取り持つのがNPOである。NPOは営利目的ではないため、企業トップがなかなか言い出せないことも言える立場にある。例えば、異業種間のプロジェクトに対し、もっと、投資するべきか、もうやめるべき等の意見である。
人材確保
大田区の中小企業では、人材確保に頭を痛めているところは多くある。しかし、中には見た目も汚い工場があったり、IT化が全然進んでいない企業も多くある。若い人材は、そのような企業に興味を示す訳がない。もっと、企業努力も必要だと考えている。
行政に対するお願い
ジャンボジェットの部品も日本で作ろうと思えばいくらでも作ることができる。
しかし、日本のどの空港で部品が必要となっても、アメリカからの輸入に頼っているのが現状である。航空部品を日本で作ることができれば、コストはおそらく半分ですむであろう。これが可能となるように行政にリクエストしている。ものづくり日本を復活させたいならば、アメリカによる規制を緩和するなどの行政のバックアップが必要である。産学連携にともなう共同研究費用は減税対象にしてもらいたい。(ページトップへ戻る)
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