パネリスト プレゼンテーション |
JAICシードキャピタル株式会社
代表取締役社長
佐々木 美樹 氏
大学発ベンチャーにはこだわりがある.このこだわりには,日本の大学の今後の資金源として国に頼るのは限界があることと,国際的な競争力への懸念が背景にある.そこで6~7年前から産学官連携関連のファンドをつくって活動してきた.
|
これまでの大学発ベンチャーの大部分は,企業を大きくすることを目的としていないものが多いのではないかと考えている.ビジネスの世界で評価されるためには,高い志を維持し,高度な能力を持つ経営人の獲得が必要である.
VBは,追加資金の注入を繰り返して成長していくため,運転能力が重要である.また経営者には,先見性や具体性,分析力など,様々な資質が必要とされる.また,インキュベーションは,徒労の多い仕事である.JAICシードキャピタルでは,事業タイプ毎に分類し,対応している.
|
パネルディスカッション 「大学発ベンチャーをいかに育成するか」
|
今回のパネルディスカッショは,「大学発ベンチャーの可能性」をテーマとし,Entrepreneurshipを専門とする東出教授の司会の下,Google Japanの村上氏,JAICシードキャピタルの佐々木氏を迎えて行われた.パネルディスカッションでは,「仕組み」と「個人起業家」の二つの観点から,活発な意見が交わされた.
「仕組み」には,文化的側面と大学発ベンチャーを起こし運営するためのシステム的側面がある.まず文化的側面であるが,大学発ベンチャーの盛んな米国と比較すると,日本の課題が浮かび上がる.米国では,教授自ら資金を含めた研究室運営のイニシアチブをとっており,切り盛りするたくましさを培っている.このような文化的側面における特性が,必然的に米国のアントレプレナーシップを醸成したのではないかと考えられる.これは米国の大学発ベンチャーの底力となっており,日本との温度差である.
最近では,日本の研究室も米国型になりつつあると感じられるものの,まだ過渡期である.過渡期ゆえに,資金運営や知的所有権などの公私の区別がつきにくくなっている.これは,システム的側面の問題点である. |
このような公私の区別について,米国ではルールが明文化されている.教授や学生を含めた大学の研究者にとって,公私の区別の明確なルールがなければ,ベンチャーの設立・運営へ挑みにくい.今後日本においても,公私の区別に関するルールを明確にする必要があると考えられる.
次に,大学発ベンチャーを起業家の視点から考えると,資金面および起業における意識の持ち方に課題がある.まず資金面であるが,日本では起業に際して最初の数百万,数十万を出す人がおらず,余剰な資金がない.アメリカでは,投資する個人が起業家と直接話し合うこともある.今後は,このような資金面での充足が必要とされる.
また起業家の意識として,日本だけを視野に入れるのではなく国際レベルを目指す「Going Grovalの視点」が求められる.起業家育成にあたって,英語教育を充実させることもアプローチのひとつとして考えられるが,単に英語を話すことに意味はない.国際レベルで大学発ベンチャーを設立・運営していくためには,ロジックが重要である.このようなロジックの育成には,実践での訓練が必要である. |