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●たくさんのご来場ありがとうございました●

国際シンポジウム報告
国際シンポジウム 2007年7月6日(金) 
参加費:無料(懇親会費 2,000円) 
会場:早稲田大学国際会議場 井深大記念ホール
 
共催: 早稲田大学アントレプレヌール研究会
早稲田大学 産学官研究推進センター/インキュベーション推進室
後援: 日本ベンチャー学会   (財)日本立地センター
独立行政法人 中小企業基盤整備機構
協賛: ウエルインベストメント(株)
Dr. Robert J. Shillman Entrepreneurship Program


  講演およびパネルディスカッション
総合司会 WERU 理事  西山  茂・白倉 至
 開会の辞 早稲田大学大学院教授 西山  茂
 歓迎挨拶 WERU代表理事・日本ベンチャー学会会長・早稲田大学大学院教授 松田 修一
開会の辞

開会の辞西山教授

 

早稲田大学大学院
西山 茂 教授

 15周年を迎えた国際シンポジウムだが,この間にベンチャーを取り巻く環境も変わり,ベンチャー支援は充実してきた.今年度の国際シンポジウムでは,これまで積み上げてきたものを踏まえつつ,大学発ベンチャーの成功事例としてお迎えしたGoogle Japan代表取締役の村上憲郎氏の講演,パネルディスカッションを通じて,改めて大学発ベンチャーについて考えてみたい.


  基調講演 
Google Japan 代表取締役社長 村上 憲郎
  パネルディスカッション
  大学発ベンチャーとインキュベーションの可能性
  パネリスト:JAICシードキャピタル株式会社代表取締役社長 佐々木 美樹
Google Japan代表取締役社長 村上 憲郎
早稲田大学大学院 教授 東出 浩教

歓迎挨拶

歓迎挨拶松田教授WERU代表理事
日本ベンチャー学会会長早稲田大学大学院教授
松田 修一

 15周年を迎えた本国際シンポジウムであるが,第一回はバブル崩壊直後の1993年であった.その当時,証券会社,キャピタル会社,株式公開済みの中堅企業が今後の行方を懸念していた.そこでキーワードをベンチャーとし,本格的な研究会をスタートした.2001年には,国レベルでベンチャー支援の機運が高まった.つまり,我々は国の政策に1歩先駆けて取り組んできたことになる.
 これまでの取り組みでは,「10年で100校のベンチャー関連講義を設立すること」を目標として産官学連携を進めてきた.しかし,大学発ベンチャーが社会に認知されることを「成功」とすれば,まだ挑戦段階にあるのが現状といえよう.最近の大学発ベンチャーの実績調査では,1,500社,11,000人の雇用創出があったといわれているが,これはあくまで統計的な試算であり,早稲田大学の取り組みも含めてまだまだこれからである.
 本日は5社に事業計画を発表してもらうが,技術的にもビジネスとしてもレベルの高い候補者達である.早稲田大学として今後もベンチャーを支援していくので,皆様よりご支援を賜りたい.

基調講演

グーグルジャパン村上氏


Google Japan
代表取締役社長
村上 憲郎 氏

 Googleのエピソードとして,大学のキャンパスが拡張したような企業であるとか,ビリヤード台があるとか,食事が無料であるなどが広く知られていると思う.現在,Googleに関する書籍は70冊ほどある.その大半が「Googleの使い方」を主題としているが,「Googleとは何か」という内容のものも10冊ほどある.その中には肯定的な内容のものもあるが,やや誇張した批判的なものには戸惑うこともある.今日この機会に,あらためてGoogleをご説明したい.
 Googleは,サーゲイ・ブリンとラリー・ペイジというスタンフォード大学のコンピューターサイエンスの学生によって1998年に創業された.きっかけは,二人が博士課程研究のテーマを探る過程で出会ったことである. Yahooはスタンフォードから1995年に創業されていたので,Googleは三年後輩ということになる.
 GoogleはYahooと比較されることが多いが,両者の違いを書籍に例えれば,Yahooは目次(ポータル),Googleは索引を提供していることになる.このネット情報の整理の仕方の違いが,ビジネスモデルの違いである.Googleは,「索引が重要な順番に(ある言葉と関連度の高い順番に)並べられている必要がある」と考えている.このような考えに基づいた技術の一つが,ページランクである.これは,参照の頻度により重要性を判断する方法である.また,リンクの仕方によりページに重みをつけるなどの工夫もされている.
 企業規模は,40拠点,110言語をカバーしている.社員数は,3月末日で12000人である.12月末は10000人だったので,四半期で2000人増えたことになる.
 Googleの企業構造であるが,中心にはミッションがあり,それを支えるもう一つの軸として技術がある.人材,オープンなコミュニケーション,フラットなマネジメントにより,ミッションと技術が結びついている.
 Googleのミッションは,「世界中の情報を整理して,世界中の人がアクセスできて,つかえるようにすること」である.例えば,昨日アナウンスしたブック検索や動画検索という,インターネットに載りきれていない情報も索引化していくのが,我々のミッションである.
 ところで,Googleが情報を支配するとかコントロールするとかいう懸念が聞かれるが,我々の自己認識は,あくまでもユーザーと情報・コンテンツのブリッジである.情報・コンテンツは出版社や著作者に存続している.Googleは索引作りに専念しているのであり,索引が精緻化されても,本の内容に影響を与えることは不可能である.

 Googleのもう一つのミッションは,「無料で提供する」である.課金しない理由は,ビジネスの目的がずれることを防ぐためである.つまり,課金を始めると「サービスがどうあるべきか」から「どうすれば課金できるか」へと,目的がずれ始める可能性がある.サービスはサービスとして,ベストのものを作り上げることを念頭に開発を続けていくのが,我々のミッションである.
 収入についてもミッションがあり,「収入は広告収入のみ」とし,実際に99%を依拠している.極めてシンプルなビジネスモデルである.
 以上のようなミッションを共有することにより,自立分散的であっても枠組みを逸脱することのない組織となっている.そして,技術を中心として組織を支えている.
 また,Googleは人材にも注力している.優秀な人材は重要であるが,それだけでは不十分である.コンピューターのリソースが限られていると,コンピューターサイエンスのバックグラウンドを持つ優れたエンジニアがアイデアを実現できなかったり,リソースを前提とした発想に陥ってしまったりする可能性がある.そこで,エンジニア達が能力を遺憾なく発揮できるよう,世界最大規模のインフラ,最高のリソースを提供している.「Googleに入ればできることがある」という環境づくりに配慮している.我々はこれを「テクノロジーサイクル」と呼んでいるが,これまでのところ有効に働いている.
 このように進めている技術開発であるが,Googleでは完成されたのではないかと思われる技術にも「BETA(テスト中)」と冠している.これは,「まだ改良の余地があるのではないか」との気持ちの表れである.つまり,技術はGoogleの中で閉じるのではなく,ユーザーからのフィードバックを取り入れることで向上させるという姿勢である.
 研究開発センターは全世界で4箇所あり,東京にもある.センターの拠点は,優秀なエンジニアが集まる場所という基準で選ばれている.従って東京研究開発センターは,東京にあっても日本向けのサービスのみを対象としているわけではない.
 組織を国際的に展開した場合,そのコントロールが問題となる.Googleではマトリックス組織の形態をとることにより,組織をまとめている.縦軸を地域(米国・欧州・日本・アジア・その他),横軸を機能(システム,マーケティング,経理,営業,プロダクト,エンジニア)としている.またフラットな組織を基本としており,その内訳は,CEOおよび創業者,副社長,ディレクター,一般社員となっている.しかし,実際はインフォーマルなコミュニケーションが盛んなことから,記述するほどはっきりと階層を意識して日々の業務がすすんでいるわけではない.このように,ミッションステートメント・組織形態共に,非常にシンプルな企業である.
 Googleでは,「間違いを認めすぐに修正する」ことが重要であり,「集団のほうが個人より優れた判断ができる」と信じている.実際にGoogle Japanでは,みんなでゴールを半年毎に策定する.これまでの教訓として,よいものを作りこめば,自然と支持は得られると実感している.今後も,引き続きユーザーに焦点を絞り,サービスの向上・充実を図る.


パネルディスカッション

パネリスト プレゼンテーション

コーバー氏JAICシードキャピタル株式会社 
代表取締役社長
佐々木 美樹


  大学発ベンチャーにはこだわりがある.このこだわりには,日本の大学の今後の資金源として国に頼るのは限界があることと,国際的な競争力への懸念が背景にある.そこで6~7年前から産学官連携関連のファンドをつくって活動してきた.

  これまでの大学発ベンチャーの大部分は,企業を大きくすることを目的としていないものが多いのではないかと考えている.ビジネスの世界で評価されるためには,高い志を維持し,高度な能力を持つ経営人の獲得が必要である.
  VBは,追加資金の注入を繰り返して成長していくため,運転能力が重要である.また経営者には,先見性や具体性,分析力など,様々な資質が必要とされる.また,インキュベーションは,徒労の多い仕事である.JAICシードキャピタルでは,事業タイプ毎に分類し,対応している.


パネルディスカッション 「大学発ベンチャーをいかに育成するか」
パネルディスカッション

 今回のパネルディスカッショは,「大学発ベンチャーの可能性」をテーマとし,Entrepreneurshipを専門とする東出教授の司会の下,Google Japanの村上氏,JAICシードキャピタルの佐々木氏を迎えて行われた.パネルディスカッションでは,「仕組み」と「個人起業家」の二つの観点から,活発な意見が交わされた.
  「仕組み」には,文化的側面と大学発ベンチャーを起こし運営するためのシステム的側面がある.まず文化的側面であるが,大学発ベンチャーの盛んな米国と比較すると,日本の課題が浮かび上がる.米国では,教授自ら資金を含めた研究室運営のイニシアチブをとっており,切り盛りするたくましさを培っている.このような文化的側面における特性が,必然的に米国のアントレプレナーシップを醸成したのではないかと考えられる.これは米国の大学発ベンチャーの底力となっており,日本との温度差である.
  最近では,日本の研究室も米国型になりつつあると感じられるものの,まだ過渡期である.過渡期ゆえに,資金運営や知的所有権などの公私の区別がつきにくくなっている.これは,システム的側面の問題点である.

 このような公私の区別について,米国ではルールが明文化されている.教授や学生を含めた大学の研究者にとって,公私の区別の明確なルールがなければ,ベンチャーの設立・運営へ挑みにくい.今後日本においても,公私の区別に関するルールを明確にする必要があると考えられる.
 次に,大学発ベンチャーを起業家の視点から考えると,資金面および起業における意識の持ち方に課題がある.まず資金面であるが,日本では起業に際して最初の数百万,数十万を出す人がおらず,余剰な資金がない.アメリカでは,投資する個人が起業家と直接話し合うこともある.今後は,このような資金面での充足が必要とされる.
  また起業家の意識として,日本だけを視野に入れるのではなく国際レベルを目指す「Going Grovalの視点」が求められる.起業家育成にあたって,英語教育を充実させることもアプローチのひとつとして考えられるが,単に英語を話すことに意味はない.国際レベルで大学発ベンチャーを設立・運営していくためには,ロジックが重要である.このようなロジックの育成には,実践での訓練が必要である.

  第10回 早稲田ベンチャーフォーラム (事業計画の発表会)
  事業計画発表
 1. Blue Ocean Company(生マグロの真空パックによる輸入事業) 代表者名:山川 和男
 2. パートナー(みんなの傘) 代表者名:澤村 大輔
 3. 株式会社 DeMBA 代表者名:小泉 謙一
 4. 株式会社 セルリムーバー 代表者名:岩ア 清隆
 5. Life of Smile 代表者名:戸澤 亮太
 MOOT CORP 2007® Competition(英文ビジネスプラン・コンテスト)発表者報告
                早稲田大学チーム 「x-cync2」 長山ひろむ
 国際シンポジウムの全体の総括と2008年度WERU計画
      WERU代表理事・早稲田大学大学院教授・インキュベーション推進室室長 大江  建
国際シンポジウムの全体の総括と2008年度WERU計画

総括大江教授WERU代表理事
早稲田大学大学院教授・
インキュベーション推進室室長
大江 建

 今回のシンポジウムでは,Google Japanの村上氏に講演をお願いした.その理由は,次々と斬新なサービスを提供するエネルギーの源泉を知りたかったからである.講演の中で,特に印象に残っているトピックが二つある.一つ目は,「集団は個人よりよいアイデアがでてくる」ということである.次に,「楽しく仕事をする」ということである.また経営者育成に関して,「社長として研鑽を積み自分を磨いていく方法が重要である」との示唆を得た.
  今回のビジネスプラン・コンテストは,昨年の30数件から大幅に応募件数を伸ばした.今回はMBAの学生にも手伝ってもらったが,学生のネットワークが効奏したのではないかと思う.
  今年からアントレプレヌール研究会では,インキュベーション推進室との協力体制を敷いている.起業家精神溢れる早稲田大学のエンジンとして,役割を担っていこうと考えている.大学発ベンチャーは,社内ベンチャーや独立ベンチャーよりも難しい.経営系,理工系の人材交流,大学生,学部学生の起業イベント,大学院生やOBによるベンチャーの経営への参加など課題は多い.今後,人・物・金の融合を進めることにより,アントレプレヌール大学としての早稲田大学を実現できるのではないかと思う.
  具体的な活動として,起業家養成講座を数件開催している.2007年は夏季合宿や女子学生起業家クラブ,アジアMOOT・CORPへMBA学生の派遣,ファミリー企業研究プロジェクトへの参加検討などを予定している.また,文理融合を目指したベンチャー起業キャンプも開催している.これは,ビジネススクール学生,理工系学生,ベンチャーキャピタルの講師などとブレインストーミングを行い,一日で事業計画を作るものである.さらに,インキュベーションコミュニティを立ち上げ,運営していく予定である.

 審査員による投票で最優秀者を決定
  審査結果報告

WERU 理事・早稲田大学大学院アジア太平洋研究科 教授 東出 浩教

  表彰
WERU 理事・ウエルインベストメント(株)代表取締役社長 瀧口  匡
 閉会の辞 WERU代表理事・早稲田大学大学院教授 柳 孝一
  交流会
 懇親会
MOOT CORP 2007 Competition
発表者報告

MOOT CORP発表者x-cync2
長山ひろむ さん

 Asia Mootは,タイで開催されるアジア各国のビジネスプラン・コンテストである.また毎年5月にアメリカ・テキサス大学で開催される世界大会のアジア予選会も兼ねている。2007年は,日本から2チームが出場を果たした.そのうち一つは,本学の「x-cync2」である.x-cync2では,ROMにOSと基本ソフト,RAMにその他ソフトを保存できるという,いわばPC環境をそのまま保存できるディスクを製品として提供する.
 この製品の提供をビジネスプランとし,コンテストに参加した.コンテストは,決勝まで他のチームのプレゼンテーションが見られないというインタラクティブ方式で行なわれた.コンテストの結果,ベストプレゼンテーション賞を受賞することができた.
 来年出場を目指す人へ,3つのアドバイスがある.まず,ジャッジはVCであるので,投資を検討するうえで必要な情報を全て用意するとよい.次に,可能な限り数字で示すことが有効である.さらに,コンテストのスケジュールを踏まえ,9月から準備を開始することが重要である.



早稲田ベンチャーフォーラム

審査結果

 本ビジネスプラン・コンテストでは,100万円を上限としてウエルインベストメント株式会社より賞金が授与される.今回は以下の2社に贈られた.
 最優秀賞(ウエルインベストメント最優秀賞):
 「株式会社セルリムーバー」 (副賞70万円)

 優秀賞(ウエルインベストメント優秀賞):
 「株式会社DeMBA」 (副賞30万円)
 その他の受賞者など,詳しくは「早稲田ベンチャーフォーラム報告」をご覧ください.

最優秀賞セルリムーバーウエルインベストメント瀧口社長(左)、
ウエルインベストメント最優秀賞「セルリムーバー」岩ア氏(右)

優秀賞DeMBA

 

 

ウエルインベストメント優秀賞
「DeMBA」

 

閉会の辞

閉会の辞柳教授

WERU代表理事
早稲田大学大学院教授
柳 孝一

 ベンチャー,アントレプレヌールシップという言葉がまだ広まっていなかったころから研究会やシンポジウム,ベンチャーフォーラムを進めてきたが,ある程度の実績が出せたかという実感がある.
 しかし,アントレプレヌールの主要国間国際競争力は,日本は依然として最下位である.ライブドアや村上ファンドの事件もあり,起業家に対する社会的な評価は高いといえない.気概は生まれたと思うが,最近では大企業の採用も増えたため,ベンチャーを取巻く環境は厳しいといえよう.
 早稲田大学は,インフラとしてのベンチャー支援については日本一だと考えている.しかし,誰にでも知られているようなベンチャーをまだ輩出していない.これは,今後の活動の課題となるだろう.
大学発ベンチャーは大変難しいものであるが,アントレプレヌール研究会も進化しながら,真の成果を出せるよう邁進していきたい.

●たくさんのご来場ありがとうございました●

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