パネリスト プレゼンテーション |
一橋大学大学院
国際企業戦略研究科 教授
マイケル・コーバー 氏
一橋大学ビジネススクールの授業では,アントレプレヌール的な事業機会という観点から授業を行っている.特に“ビジネス・アイディア”の実行可能性を検討する演習に力を入れており,そのアイディアに基づくビジネスプラン作成を指導している.この授業を通して,アントレプレナーの視点,起業の大変さ,ビジネスプラン作成の苦労と達成感を学生に経験してもらおうと思っている.
教育の一方で,GVCというベンチャーキャピタルを運営している.“Source Globally, Invest Locally”をスローガンに,日本やオーストラリア,ハワイなどで投資を行っている.イノベーションには国境がないのである.
ソリッド(株) 代表取締役
ナリン・アドバニ 氏
「インドの大学とベンチャー」
現在日本法人代表を務めるソリッド(株)では,通信インフラ(カーナビなど)に搭載されるソフトウェアの開発を行っている.オラクルなどの大手競合他社があるなかで,ニッチマーケットで驚異的パフォーマンスを実現している.
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個人的な活動として,その他企業の日本法人の立ち上げや建て直しなども行っており,投資もしている.
インドの大学では,技術系・マネジメント系の大学の競争率が高く,またこれらの大学は就職率もよい.しかしこのような環境下でも,インドには起業を志す学生がいる.なぜならば,大学が学生の起業をサポートするシステムを有しているからである.たとえば,大学三年次の夏休みから始める起業家体験では,失敗をしてもそのあと就職ができるというリスクの少ない環境で起業を経験することができる.インドはまだ若い国であり,今後の発展が期待される.
早稲田大学文学学術院 教授
楊 達 氏
「WEICの歩み」
一教員として中国語文法の研究に従事する傍ら,企業研修や特許翻訳サービスを中心とする学内ベンチャーのWEICを設立した.現在は,PC−携帯学習サイトの発表に向けて準備を進めている.学内ベンチャーとして,ビジネスの知識,開発費の調達,および研究先の獲得の課題にぶつかり苦労した. |
パネルディスカッション 「大学発ベンチャーをいかに育成するか」
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日本の大学発ベンチャーは,経済産業省の目標であった1000社をクリアした.しかし日本の総企業数に比べれば,まだ数は少ない.このような現状を踏まえ,大学発ベンチャーの今後の展開,および大学発ベンチャーが良質ともに諸外国に遅れをとっている原因について,柳教授のコーディネートの下パネリストによる活発な議論が交わされた.
まず「大学発ベンチャーの今後の展開」として,コーバー教授は,アントレプレナーシップやベンチャーキャピタルといった教育分野を発展・充実させていきたいとの教育のビジョンを示した.アドバニ氏は日本の経済構造の中で近年企業がようやく認識されはじめたという現状を鑑み,起業に際する努力が正当に評価される必要性を訴えた.また楊教授は自身のベンチャービジネス経験を踏まえて,大学側が提供するインフラが大学発ベンチャーを促進すると述べた. |
次に「日本の大学発ベンチャーは,量・質ともに諸外国に遅れをとっているのではないか」という問題意識に基づき,その原因と解決策について議論された.一般に起業には経済的合理性が認められないため,起業家自身の情熱が必要となる.しかし,日本の社会構造は依然として大企業が中心であり,起業が失敗した場合の回復には時間がかかる.このような条件下での起業について,まず教育を通じてリスクを理解させることの重要性が述べられた.また経営には経験も不可欠であることから,若手の起業家と経験豊富なプロの経営者とのマッチングも策のひとつとして挙げられた.さらに起業家自身が成功体験することの重要性も指摘された.最後に,起業にはリスクを背負った起業に対する社会の懐の深さが必要であるとのことが,改めて認識された. |