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国際シンポジウム報告
国際シンポジウム 2006年7月7日(金) 
入場無料(懇親会費 2,000円) 
会場:早稲田大学国際会議場井深ホール
 
主催: 早稲田大学アントレプレヌール研究会
後援: 早稲田大学研究推進部インキュベーション推進室 
日本ベンチャー学会 (財)日本立地センター
協賛: ウエルインベストメント(株)
Dr. Robert J. Shillman Entrepreneurship Program
協力: 創業・ベンチャー国民フォーラム


  講演およびパネルディスカッション
総合司会 WERU 理事  西山  茂・白倉 至
 開会の辞 WERU理事・ウエルインベストメント(株)最高顧問 浅井 武夫
 歓迎挨拶 早稲田大学副総長・常任理事 村岡 洋一
 歓迎挨拶

歓迎挨拶西村教授早稲田大学 
アジア太平洋研究科 
西村吉正教授

 日本におけるビジネス教育基盤のひとつである早稲田ビジネススクールは,特にベンチャー論や起業家養成に力を入れている大学院である.教育のみならず,教育や研究の成果を実践の場に活用していくという観点から,アントレプレヌール研究会やシンポジウムなどの活動を続けてきた.本日のパネルには,日・米・中の識者に集まってもらったが,これらは将来の経済情勢に寄与すると考えられる諸国のうちの三カ国であると捉えることもできるだろう.また,午後の早稲田ベンチャーフォーラムでは5つの事業計画発表が予定されており,全体としてグローバルかつ実践的な内容となっている.

  基調講演 
 (株)ドリコム 代表取締役 内藤 裕紀
  パネルディスカッション
パネリスト 一橋大学大学院 国際企業戦略研究科 教授 Michael Korver
ソリッド(株) 代表取締役 Nalin Advani
早稲田大学文学学術院 教授 楊  達
コメンテータ WERU 代表理事 早稲田大学大学院アジア太平洋研究科教授 柳  孝一

開会の辞

浅井理事開会の辞WERU理事・ウエルインベストメント(株)最高顧問
浅井武夫氏

 昨年は“大学発ベンチャーをよりよくするために”と題して,国際的位置づけや産学連携について活発に議論が交わされた.本年は“大学発ベンチャーをいかに育成するか”というテーマに挑戦することとなった.基調講演は,近年注目を集めているベンチャー企業のひとつである株式会社ドリコムの代表取締役社長をお迎えした.また後半は,事業計画報告も例年通り行われる.
 大学発ベンチャーにおける課題として,以下の4点が挙げられる.

  1. 地域活性化/経営資源の供給(インフラ)
  2. 技術開発と経営マネジメントのパートナーシップ/人材確保と育成
  3. 研究開発費・事業開拓における資金
  4. 大企業と連携などによる市場開拓,大学OBの協力

 これらの課題の解決策がみえるような会となることを願う.

基調講演

ドリコム内藤氏株式会社ドリコム 代表取締役
内藤 裕紀 氏

 株式会社ドリコムは,ブログを中心に社内の情報共有ソリューションを提供している.2006年には,東証マザーズへの上場を果たしたが,これまでの道は平坦ではなかった.
 決して豊かではない家庭に育ち,成績不振や家出も経験した.そのような生活の中で,偶然参加した経済シンポジウムの講演で実務の面白さを知った.そこで,まずは大学に入学すべく,受験勉強を開始した.受験勉強を通して,計画を立てること,それを実行すること,その先には未来があることを学んだ.
 大学入学後,インターネットや受験対策のための派遣事業を起こした.しかし採算が合わず,「お金を稼ぐ」経験の必要性を痛感した.そこで知り合いから指輪販売の話があったため,挑戦することにした.指輪販売では,ひとつも売れなかった午前中とは対照的に,敷物や並べ方など工夫した午後は売れるようになり,これが商売だと実感した.また別の企業では,営業の基本として接客の修行をした.そこでは,顧客に興味をもってもらうためのノウハウを身につけた.しかし自分に本当に向いているものを問い直すため,いったん学業に戻った.過去の自分の経験を振り返り,起業の基本を認識していたか再考する日々を送ったが,改めて起業の決意を固め休学(後に退学)した.
 まず起業には人材が必要である.起業に際して,ビラまきや情報学科のホームページを丹念に閲覧するなどして,人材発掘に勤しんだ.そして2001年に起業した.このようにして集まった人材は,現在ドリコムの主要なポジションを担っている.
 起業後,しばらくは食事もままならない厳しい状況が続いた.メンバーの実家に食料供給を頼むなどして,共同生活を続けた.受託開発の話はしばしばもらい,のどから手が出るほど受けたかったのだが,「自分達で開発したものを世に出したい」 という起業時の初志にこだわった.そこで有名企業の仕事のみを請け負うこととし,まずは実績を作ることにした.たとえば,広告代理店が技術系企業に提案するための資料を無料で作成するなどして,経験を積んだ.

 一方でドリコム独自のサービスとして,MSNメッセンジャーの口コミ効果に注目したサービス「My Profile」などを展開した.このような業務努力の結果,2004年には売上1億円を突破することができた.また情報通信を促進するツールとしてブログをいち早く導入し,マイクリッピングという日本発のソーシャルブックマークサービスの提供を始めた.2006年には,情報通信を促進するツールであるブログの普及に貢献したとして,その功績を政府に表彰されるまでとなった.また同年,東証マザーズへの上場を果たした.その他サービスには,行動履歴からパーソナライズを実装したニュースサービス,ブログのOEMサービス,ドリコムで提供するヤプログを含め20社以上が参加するブログポータルなどを提供している.さらに最近では,日本発のコンテンツマッチングサービスも開始した.これまでの活動を振り返ると,隔月ペースで新サービスを提供してきたことになる.
 ドリコムは起業時より一貫して「人々を驚かせるようなオリジナルなものを作りたい」 という気持ちをもっている.先日の社員総会では,利潤を追求するのではなく,自分たちのやりたいことをやりたいだけできる企業になろうと,改めて語ったところである.来年は世界市場への進出を予定しており,世界へ向けたものづくり企業への発展を目指している.

ドリコム内藤氏講演


パネルディスカッション

パネリスト プレゼンテーション

コーバー氏一橋大学大学院
国際企業戦略研究科 教授 
マイケル・コーバー

 一橋大学ビジネススクールの授業では,アントレプレヌール的な事業機会という観点から授業を行っている.特に“ビジネス・アイディア”の実行可能性を検討する演習に力を入れており,そのアイディアに基づくビジネスプラン作成を指導している.この授業を通して,アントレプレナーの視点,起業の大変さ,ビジネスプラン作成の苦労と達成感を学生に経験してもらおうと思っている.
 教育の一方で,GVCというベンチャーキャピタルを運営している.“Source Globally, Invest Locally”をスローガンに,日本やオーストラリア,ハワイなどで投資を行っている.イノベーションには国境がないのである.

アドバニ氏ソリッド(株) 代表取締役 
ナリン・アドバニ 氏 
「インドの大学とベンチャー」

 現在日本法人代表を務めるソリッド(株)では,通信インフラ(カーナビなど)に搭載されるソフトウェアの開発を行っている.オラクルなどの大手競合他社があるなかで,ニッチマーケットで驚異的パフォーマンスを実現している.

個人的な活動として,その他企業の日本法人の立ち上げや建て直しなども行っており,投資もしている.
 インドの大学では,技術系・マネジメント系の大学の競争率が高く,またこれらの大学は就職率もよい.しかしこのような環境下でも,インドには起業を志す学生がいる.なぜならば,大学が学生の起業をサポートするシステムを有しているからである.たとえば,大学三年次の夏休みから始める起業家体験では,失敗をしてもそのあと就職ができるというリスクの少ない環境で起業を経験することができる.インドはまだ若い国であり,今後の発展が期待される.

楊氏早稲田大学文学学術院 教授 
楊 達 氏
WEICの歩み」
 一教員として中国語文法の研究に従事する傍ら,企業研修や特許翻訳サービスを中心とする学内ベンチャーのWEICを設立した.現在は,PC−携帯学習サイトの発表に向けて準備を進めている.学内ベンチャーとして,ビジネスの知識,開発費の調達,および研究先の獲得の課題にぶつかり苦労した.


パネルディスカッション 「大学発ベンチャーをいかに育成するか」
パネルディスカッション

 日本の大学発ベンチャーは,経済産業省の目標であった1000社をクリアした.しかし日本の総企業数に比べれば,まだ数は少ない.このような現状を踏まえ,大学発ベンチャーの今後の展開,および大学発ベンチャーが良質ともに諸外国に遅れをとっている原因について,柳教授のコーディネートの下パネリストによる活発な議論が交わされた.
 まず「大学発ベンチャーの今後の展開」として,コーバー教授は,アントレプレナーシップやベンチャーキャピタルといった教育分野を発展・充実させていきたいとの教育のビジョンを示した.アドバニ氏は日本の経済構造の中で近年企業がようやく認識されはじめたという現状を鑑み,起業に際する努力が正当に評価される必要性を訴えた.また楊教授は自身のベンチャービジネス経験を踏まえて,大学側が提供するインフラが大学発ベンチャーを促進すると述べた.

 次に「日本の大学発ベンチャーは,量・質ともに諸外国に遅れをとっているのではないか」という問題意識に基づき,その原因と解決策について議論された.一般に起業には経済的合理性が認められないため,起業家自身の情熱が必要となる.しかし,日本の社会構造は依然として大企業が中心であり,起業が失敗した場合の回復には時間がかかる.このような条件下での起業について,まず教育を通じてリスクを理解させることの重要性が述べられた.また経営には経験も不可欠であることから,若手の起業家と経験豊富なプロの経営者とのマッチングも策のひとつとして挙げられた.さらに起業家自身が成功体験することの重要性も指摘された.最後に,起業にはリスクを背負った起業に対する社会の懐の深さが必要であるとのことが,改めて認識された.

  第9回 早稲田ベンチャーフォーラム (事業計画の発表会)
  事業計画発表
 1. プロジェクト名:モバイル秘書 代表者名:宮川  耕
 2. 会社名:株式会社ジーオングストローム 代表者名:渡邉 朋信
 3. 会社名:株式会社叡源 代表者名:楠田 雄己
 4. 会社名:イービーエム株式会社 代表者名:朴  栄光
 5. 会社名:株式会社ユースコミュニケーションズ 代表者名:高田 雄太
 MOOT COR 2006 Competition(英文ビジネスプラン・コンテスト)
  一橋大学大学院国際企業戦略研究科 John Kyle Dorton 
 国際シンポジウムの全体の総括と2006年度WERU計画
  WERU 代表理事・早稲田大学大学院アジア太平洋研究科 教授 大江  建

 審査員による投票で最優秀者を決定
  審査結果報告
    最優秀賞「イービーエム株式会社」朴 栄光氏
    その他の受賞者など、詳しくは「早稲田ベンチャーフォーラム報告」をご覧ください

WERU 理事・早稲田大学大学院アジア太平洋研究科 教授 東出 浩教

  表彰
WERU 理事・ウエルインベストメント(株)代表取締役社長 瀧口  匡
 閉会の辞
   WERU理事・テクノベンチャー(株)前代表取締役社長 上條 正夫
  交流会
 懇親会
MOOT CORP 2006 Competition
発表者報告

MOOT CORP発表者一橋大学大学院
国際企業戦略研究科
John Kyle Dortonさん

 MOOT CORPはMBAの学生を対象としたビジネスプランコンテストである.MOOT CORPの狙いはビジネスの疑似体験をすることであり,その後実際に起業する学生もいる.
 このコンテストは11月から3月の5ヶ月に渡り行われる.2006年の最終発表はタイのチュラロンコン大学で行われ,20チームが挑んだ.コンテストは予選,準決勝,決勝があり,持ち時間は質疑応答を含めてそれぞれ20分,30分,45分となっている.
 本年度の決勝は,タイから3チーム,日本から1チームという構成で行われ,タイのチームが優勝した.
 このコンテストは,結果を怖れることなくビジネススキルを試し,MBAで学んだことを集約する上で重要な機会となっている.

 

懇親会風景懇親会風景

懇親会風景

 

●たくさんのご来場ありがとうございました●

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