ファミリー企業の永続性と企業家精神
―STEPプロジェクトのご紹介―
早稲田大学アジア太平洋研究センター
助手 行本 勢基
2007年10月
早稲田大学アントレプレヌール研究会(WERU)では、この度、バブソン大学が主催するSTEP(Successful Transgenerational Entrepreneurship Practices)プロジェクトに参画することになりました。このプロジェクトでは、昨今、注目を集めているファミリー企業について、その永続性と企業家精神の観点から調査研究が行われます。ヨーロッパ、南米、アジア太平洋、北米の研究者や企業関係者による国際的な調査研究を行いながら、世代を超えたファミリー企業の成長を可能にする要因について探求していくことが大きな課題です。
2007年6月、香港中文大学創業研究センターにアジア各国のファミリー企業、ベンチャー企業の研究者が集い、アジア太平洋地域の設立総会が開催されました。WERUの他に、香港中文大学創業研究センターやオーストラリアのボンド大学ビジネススクール、中国・広州市の中山大学ビジネススクール、そしてインド・ビジネススクール(Indian School of Business)の参加が決定しています。
世代を超えて事業を営んできたファミリー企業では、一体、どのような企業家活動が展開されてきたのかを明らかにしようとしています。景気変動や流行に左右されることなく、企業を存続させてきた秘訣はどこにあるのか。永続性をもたらす要因の一つとして企業家精神を取り上げ、その精神の源泉となるファミリー、創業者一族に光を当てようとしています。
具体的には、詳細なケース研究に基づく定性的調査とステークホールダー・サーベイ調査が実施されます。調査研究期間は3年間であり、アジア太平洋地域では、2007年から3年間が予定されています。毎年、各大学は、ファミリー企業2社に対するケース研究と10社に対するサーベイ調査を行うことが義務付けられており、最初の3年間でプロジェクトの第一段階は終了します。3年目に開催される各地域の総会へ調査対象となった企業関係者を招き、実践的なフィードバックと情報交換が行なわれることになっています。
このように、STEPプロジェクトの大きな特徴は、ベンチャー企業の研究者とファミリー企業の研究者との間に架け橋を提供することにあります。さらに、ファミリー企業の経営者と研究者による情報交換を促し、相互の学術的、実践的ギャップを埋めることも大きな目的です。プロジェクトへの参加により、アジア太平洋地域のみならず、世界各国のファミリー企業と交流するチャンスが得られます。研究者と企業関係者の双方にとって、STEPプロジェクトが非常に有意義な機会となることは間違いありません。会員皆様の調査へのご理解とご協力を心よりお願い申し上げます。
参考HP:Successful Transgenerational Entrepreneurship Practices (STEP)(バブソン大学)